大型店と商店街の問題、解決策はあるのか

 度々ニュースで目にする記事がある。それは「地方都市に大型店が進出し、客がそちらに流れて商店街の店舗が店じまいをすることになった」というものだ。

 

 私自身地方出身であるから、駅前の中心商店街がシャッター通りと化する一方で郊外の大型店舗は車で一杯、お客さんもたくさん、という状況は幾度も目にしてきた。ただ、これは利用者(=お客さん)の立場からすると当然の結果である。それはなぜか?

・大型店の方が便利だから

この一言に要約される。具体的には、

  1. 値段が安い
  2. 営業時間が長い
  3. 駐車場がある
  4. 接客が良い 

以上4点である。以下、それぞれの特徴を箇条書きで述べる。

1.について

商店街:定価販売が基本

大型店:定価より安い。しかもサービスデーも多い

 

2.について

商店街:18時で閉まる、遅くても20時までが多い

大型店:早い所でも21時位まではやっている

 

3.について

商店街:駐車場がないか、あっても提携駐車場で入るのが面倒だったり有料だったりする

大型店:基本的に駐車場完備で無料。有料の所もあるが一定額以上の買物をすれば無料になる

 

4.について

商店街:当たり外れあり。良いところはフレンドリーだったり、サービスしてくれたりするが、悪いところは目も当てられない

大型店:当たり外れ少ない。丁寧な接客

 

 このように列挙してみると、商店街が勝てる要素は皆無に等しい。だから、客は大型店に流れ、商店街は衰退する一方だ。

この状況を「当然の結果」と述べたが、これによる弊害もある。

  1. 買い物難民が出現する
  2. 商店街で働く人が職を失う
  3. 駅前の見栄えが悪くなる

 それぞれ解説する。

 1.についてだが、大型店は自動車利用が前提だ。すなわち、自動車を持たない利用者(高齢者や学生等)は近所に住んでいない限り、自転車や徒歩で郊外まで時間と労力をかけて行くしかない。しかし、自転車や徒歩でもアクセスの良い店はほとんど閉業している。となると、買い物をする店舗への移動手段がなくなる。こうして買い物難民が出現する。これは中心市街地の空洞化にもつながる。

私も北日本の地方都市で学生生活を送っていた頃、移動手段が自転車しかなく最寄りのイオンまで30分近くかけて移動せざるを得ず、大変不便であったのを思い出す。

この問題への対処として、事業者によるが無料の買い物バスを出したり、移動販売車を出したり、ネットスーパー(通販)のサービスを実施している。

 

 2.についてだが、商店街の店舗は売上が減り、店じまいをすることになる。結果、商店街で働く人は失業する。結果的に、失業者があふれるような事態になると考える人もいるかもしれない。

しかし、実際には大型店が受け皿となり、その分の雇用をカバーする。場合によっては、商店街の店舗が大型店のテナントとなるケースもある。

 

 3.についてだが、自動車利用では不便で大型店の進出余地の少ない駅前商店街の利用者は減り、結果的にシャッター商店街となる。そうなると、駅前はさながらゴーストタウンのように昼間でも歩く人がまばらな状況になり、見栄えが悪くなる。こうなると、外部から訪れた人の印象に影響してしまう。

大型店の進出に反対する人の意見として、これを挙げる人も少なくないのではなかろうか。

この対策として、行政では歩道をカラフルにしたり、行政施設と一体となった新たな商業施設を建設したり、商店街とタイアップしてゆるキャラを作ったりしているが、本質的な対処になっていないため、うまくいっていないケースが多い。現実的な対処方法としては、外部利用者(出張で来た人、観光客等)向けに特化するしかないと思われる。

・結局、どうするのが解決策なのか?

 大型店をメインとし、これの補完として買い物弱者向けの店舗(まいばすけっとのような小型店)を商店街に設置したり、ネットスーパーを導入することが現実的には最も良い方法であると考えられる。商店街の役割は、商店街が持つ地域密着性と小回りの効く接客を活かして大型店にはない価値(徒歩で行ける、地域コミュニティの一部としての機能、ニッチなニーズに特化等)を提供することとなる。

 たとえば、北海道帯広市にある「北の屋台」が挙げられる(商店街とは少し違うが)。ここは上記の「大型店にはない価値」を上手に取り入れた例だと思う。

こういった努力をせずに闇雲に大型店の出店を抑止すると、今度は生活が不便になる。大型店とは少し違うが、私の実体験を述べる。

数年前住んでいた某団地では、19時で閉まる上に競争がなく品物の値段が高いスーパーと幾つかの個人経営のレストラン、薬局程度しか団地内の商店街になかった。かといって団地外の店舗に出ようとすると、坂道を2kmほど移動しなければならず、不便である。ゆえに生活不便度が上がるのである。

 

 早くからモーターリゼーションが進み、郊外大型店の先駆けとなったアメリカでは、地域の条例により大型店の出店を禁止した地域がある。しかし、このような規制は結果的に生活を不便にし、地域の魅力を下げているだけではないだろうか?

ゆえに、上記のように大型店舗を積極的に誘致する一方、商店街が持つ地域密着性と小回りの効く接客を活かし、上記のような大型店にはない価値を提供することが現実的な解決策ではなかろうか。